遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

現実が想像を超える日

先週半ばの夜、寝る支度をしていると、上司からスマホに着信が…


(こんな時間になんだろう?)


嫌な気分になりながら出ると、上司が一方的に甲高い声でまくしたてる。


高い声(しかも大声)が苦手な自分は、胸がキリキリした。

どうやら都知事の要請を受けて、「社員らを明日以降自宅待機にさせよう」という話らしい。

「ただし管理職以外…」。

………

翌朝7時30分に、役員と管理職の一部が集まった。他の社員らは、昨夜中に連絡が行き、いっせいに自宅待機。


「来週以降はどうするか?」


長々話し合いの結果、まずは週末までの平日はいずれも管理職だけで乗り切り、翌週からはシフト制を組むことに…


だが、ただでさえ“自己主張”と言う名の「文句言い」の多い職場。自分と同じくらいの世代の管理職の一部から、

「小さい子供がいるから自分も休みたい!独身や子供のいない管理職だけが出るべき!」

なんて平気で言う者もいる。


「非常事態の時だからこそ助け合う」

 

そんな言葉は綺麗事だとつくづく思う。

マスクやトイレットペーパーなどの買い占め騒動同様、人はいざとなると「自分さえ良ければいい」と、身勝手自己中な本性が出るものだ。

 

面倒なことを嫌い、表向きだけは大勢にいい顔をする新しい上司。

結局、子供のいる管理職は外され、彼らも自宅待機となった。

 

会議が終わり、自分の所属する人事部に戻ると、茶色の封書が届いていた。

不審に思いながら封を開けると、パソコンで打たれた手紙が入っている。

目を通すと、

「小さい子供の面倒をみると言って、特別休暇を取得している社員が、こんなことをして遊んでいるのをご存知でしょうか?」とある。

手紙と共に、SNSをカラーコピーしたものが大量に同封されていた。女性同士が子供を連れて、どこかの遊戯施設で楽しげに遊ぶものや、ホームパーティーをしているものばかり。

よく見ると、いずれも確かに某部署の社員達だった。


送り主がひいたと思われるマーカーのコメントを読む。


「旦那クンもテレワークだからぁ〜みんな一緒だよ〜★こ〜ゆ〜時こそぉ家族ダンランだねぇ〜★楽し過ぎ〜★」


自分は大きなため息をつきながら、手紙を封筒に戻す。


送り主が誰かは分からない。思い当たる社員が数名頭に浮かんだが、証拠はない。

それより、こんな他人のSNSを見つけ出し、わざわざ送りつけてくるという行為に薄ら寒くなる。


自分の職場は入社当時から、頻繁に怪文書やら告発文書が送られていると噂では聞いていた。だが、実際手紙を目にしたのは初めてのこと。今回のものは、上司にも一応見せるつもりだが、どうせ「匿名なんだし放って置こう」って言うに決まっている。


(自分は何でこんなところにいるんだろう?

やっぱりこのままここに居るべきではない。それともどこの職場もこんなもの?自分はどこか感覚がズレている?)

………

夜遅く仕事を終え、電車に乗る。

車内は、以前ほどではないけれど、花見&飲み会帰りと思われる連中は一定数おり、車内でマスクもせずにハイテンションで喋りまくっている。

そんな連中を横目に見ながら、旦那に勤務先が独身と子供のいない管理職以外、シフト制になったことを知らせた。


旦那からはすぐ返事がきた。


「君が感染したら誰が責任取るんだよ?君だって年取ったお母さんいるだろ?」


彼はそう言うと思った。


(そんなことはわかってるよ。でもじゃあどうしたらいい?)


ここで自分まで文句を言い出したら、あれこれ言う同僚と一緒になってしまう。だったら、自己責任で今はもう少し頑張るしかないじゃないか。


今日はため息ばかりだ。

 

車内の酔っ払い連中は、一段と騒がしくなった。


飛び交う「感染爆発」「緊急事態宣言」「首都封鎖」という言葉なんて、彼らには無縁みたい。きっと別世界の出来事だと思っているんだろう。


でも現実はそうではない。


今まで映画や小説の中だけだと思っていたようなことが、これから起きる気がしてならない。

電車の窓に広がる深い夜の風景を見ていると、東日本大震災の時に感じた底知れぬ不安、いや、それ以上の恐怖のようなものを今感じてしまうのだ。