遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

小さな諍い

ある休日の昼下がり、ひとりで実家から車で30分近くのところに来ていた。


そこは緑豊かな田園が広がる自然公園。

小川が流れ、たくさんの鳥が池で水遊びをしている。


その日は親を病院に連れて行き、迎えに行くまで時間を潰す必要があったことから、少し周辺を歩いてみようと思った。


自分は昔から散歩が好きだ。

普段の土日は、自分が住んでいるマンションから数キロ離れたところまでひたすら歩く。


何かイライラした時、頭をクリアにしたい時、歩くことで落ち着きを取り戻し、冷静になってくる。


実家は郊外にあるため、都心とは景色が全く異なり、いつもよりリラックスできる気がする。


(このあたりを歩けば、きっと気持ちを落ち着かせることが出来るはず…)


実は、実家に戻る前、電話で旦那と小さな諍いをした。

自分が勤務先や実家のことで、ちょっとした悩みを話したことがきっかけだ。

最近旦那から、「声に元気がないみたいだから何でも言ってごらん」と促されていた。

自分としては、別に何か具体的なアドバイスを貰いたかったわけでもない。ただ旦那から言われたので、今の状況を言っただけ。

だが電話だと顔が見えない分、どうしても一方的になり、上手く伝わらないこともある。

そのせいか旦那は最後まで聞きもせず、

「なんだそんなことか…気にしなければいいんだよ」

と言い放ったのだ。

それを聞き、思わずムッとした。


(あんなに「何でも聞くから話せ」って言ってたくせに…)


気にしないで済めば悩みもしない。

どうしたらよいかわからないから気持ちを吐露したのだ。

それなのに、旦那はただ「気にするな」を繰り返すだけ。

「もういいよ!」

次第に虚しさと腹立たしさを覚え、自分は一方的に電話を切った。


苛ついた気分で実家に戻ると、親が自分の顔を見るなり、深い溜息と愚痴をこぼしまくる。

高齢であるので仕方ないとは思いつつも、やはり聞いていると精神的にかなり堪える。

気持ちはさらに重くなり、どうにかなりそうだった。

………

車を所定の場所に止め、外に降り、山へ続く遊歩道を歩き始めた。


その日は真冬とは思えないような暖かさ。

青く澄み切った空は、雲ひとつない。


(ここに来たのはいつ以来だろう?)


たぶんもう何年も前、自分が大学生だった頃、飼っていた犬と一緒だったはず。

 

以前は、こういう自然豊かな田舎っぽいところが好きではなかった。

若い時は、もっと都会的な場所に憧れ、早く都内に住みたいとひたすら願っていたものだ。

それがどうだろう?

年を重ね、再びこうして訪れてみると、この場所の良さがようやく分かってきた。

育った場所への愛着と懐かしさも相まって、とにかく心が落ち着くのである。


ふと辺りを見回すと、ひとりで来ている人ばかり。それも何故か年配の男性が多い。


(みんな日頃の喧騒から解放されたくて、こういうところで、ひとりゆっくり寛ぎたいんだろうな…)

 

しばらく歩いた後、木製のベンチに腰掛け、せせらぎに耳を傾けてみた。

絶え間なく流れ続ける小川をじっと見つめているうちに、苛立ちが徐々におさまってくる。


(この川は海につながっているんだろうか?)


目を閉じて大きな海を思い浮かべてみる。


(自分は、日常の小さなことに囚われ過ぎていたのかな?だから旦那は「気にするな」って言ったのかな?)

 

いろいろ思い巡らせるうち、今朝からの重苦しい気分が自分の中から溶け出し、目の前の小川へ、やがて大海原に流れ出ていくような気がした。

 

その時、スマホにメッセージが……旦那からだ。


「今朝はごめん。ゆっくり話したい」


フーッと、大きく息を吐く。

「もう怒ってないよ…」

誰かが聞いているわけでもないのに、そっと呟いた。

 

結局いつもこうなるんだ。

以来、旦那はいつにも増して優しくなった。

 

こんなことを繰り返しながら、かれこれ15年以上続いている。