遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

年を重ねて得たもの

世の中には、初対面にも関わらず、人から好かれ、良い待遇を受けるという得な人がいる。

旦那もそのひとり。

今まで一緒に居るとき、幾度そんな場面を目にしてきただろうか。


以前一緒に旅行をした時のこと。

地図にないマイナーな立ち寄り湯の場所が分からず、駅で立ち往生。自分が周辺の人に尋ねるも、誰しも首を傾げるばかり。

今度は旦那が地元の人と思しき子どもを連れた主婦に声をかけた。

すると、

「ええ、知ってますよ。よかったら私の車でご案内しましょうか?」とニッコリ。

旦那が「彼もいいですか?」と自分を指しながら言った途端、その女性が一瞬、

「え?この人もいたんだ…」

という表情をしたのを見逃さなかった。


また別の旅行では、目当ての食事処に着いたものの、ランチタイムを少し過ぎていた。

自分が店のスタッフに尋ねた際は、

「これから休憩に入るので…」

と素気無く断られた。だが旦那が顔を出して再び頼んだところ、店のスタッフは急に表情を変え、

「メニューが少なくなってますが、良ければ…」

と態度が急変。その時もやっぱり相手は女性だった。店に入った際、旦那には笑顔、自分にはチラッと目をやっただけ。


日本に限らず海外に行った時も同じ。

昨年、ヨーロッパのドラッグストアで自分の方がたくさん買い物をしたのに、なぜか殆ど買わない旦那にだけ、いろいろな試供品を笑顔で手渡す中年の女性スタッフ。


また財布が欲しくて出向いた某ブランド店でのこと。

アジア人でごった返す店で、旦那を外に残し、自分だけ店に入り、中年女性スタッフに話しかけた。するとその女性は、

「少し待ってて頂戴。後で手が空いたスタッフが来るから…」と不機嫌そうに告げた。

やがて外で待っていた旦那がしびれを切らし入って来て、同じ女性に話しかけた途端、

「Oh!知り合い?OK!今すぐに対応するわ!そうだ!カプチーノ飲む?」

と満面の笑みを旦那だけに向ける。


空港やホテルでも同じ事があった。

自分が頼むと何もないのに、旦那が話すと席や部屋がグレードアップされるなど、とにかく対応が良くなるのだ。それは決まって女性が相手の時。

それはそれでいい。

自分も一緒にいい待遇を受けられるのだから…


ただ、彼女達が旦那と話した後、自分に向けられる眼差しを見るたび、それは遠い過去のある記憶を呼び醒ます。

………

まだ自分が今の勤務先に入社して間もない頃のこと。当時の上司に、銀座の超高級クラブに連れていかれた。

正直自分はそんな店に全く興味がなかったものの、足を踏み入れた時は、その異様な雰囲気にただ圧倒されるばかりだった。


ロココ調の内装、煌めくシャンデリア、沈み込みそうな柔らかいソファ。目にする全てがまるで映画のセットのようだった。

そこに現れたのは、これまた女優のように綺麗なママさん。

真っ黒な長い髪、透けるような白い肌、胸元が大きく開いた光沢のあるロングドレスを纏っていた。

出迎えてくれた際、口元こそ真珠のような歯を見せていたが、目は全く笑っていなかったことをよく憶えている。


強い香水が漂う中、ボーッとしながら上司と共にソファに座り、水割りを飲みながら、ママさんの話を聞く。

上司は当時50代、男らしい顔立ちで、いかにも女好きそうなタイプ。とにかく優秀で、いずれの社員からも一目を置かれていた。

まだ若かった自分は、何となくその上司に畏敬の念を抱いていた。

きっとその時も、何か考えながら自分は上司をジッと見つめていたんだと思う。


不意にママさんが自分にこう言った。

「ねえ、貴方って、女から男を奪いそうな雰囲気がある。何かそんな“匂い”がする…誰かに言われたことない?」


「え、え?……」


あまりに唐突な問いかけに、自分は思わず凍りついてしまった。


(自分がゲイだって見抜かれた?)


その言葉を発した後、自分の目を真顔で凝視する彼女。

その時、自分は悟った。


(彼女は自分のことを“同じ女性”として見ている)


自分もジッと見返した。ほんの数秒だったけれど…そして自分は先に目を伏せてしまった。

次の瞬間、彼女はケタケタ笑い出した。

そして何事もなかったように別の話題に移っていた。

……

あの時、銀座のママが自分に向けた目。

それは、なぜか「ライバル心」「嫉妬心」のような敵視が宿っていた気がする。


あれから長い年月が経った。


旦那が誰かにいい対応をされ、一方で自分に向けられる目を見るたび、銀座のママの言葉を思い出す。


年齢や経験を重ねた自分。


もしも、もう一度ママにあの目で見つめられたら?

もう目を伏せることはないだろう。


彼女だけでなく、いつも旦那にだけいい顔をする人達に対しても…


あの時より、自分は少しだけ強くなったはずだから…