遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

赤いニット帽

幼い頃、知らない男に連れ去られそうになったことが二度ほどある。


最初は、駅の改札前で母親が切符を買いに行っているのを待っていた時。

突然視界が高くなったかと思うと、口を手で塞がれ、そのまま荷物のように抱えられた。

震えながら見ると汚い中年の男。

幼い自分は、一瞬何が起きたのかもわからず全く声も出せず。手足をバタバタさせたが、大人の男にかなうはずもない。

その時、戻った母親が大声で「人さらい!」と叫んだことで、男は自分をおろし逃げ去り、事なきを得たのである。


二度目は、姉と一緒に近所を散歩していたとき。おぼつかない足取りで歩いていたところ、いきなり後ろから自転車に乗ってきた男にヒョイっと抱きかかえられ、そのまま走り出そうとしたのだ。

自分を抱えたのは、てっきり迎えに来た父親だと思ったのだが、見ると全く見知らぬ中年の男。

声をあげようにも全く声にならなかった。

その時は姉が猛烈な勢いで自転車を漕ぎ出そうとする男に体当たりをし、どうにか解放されたのだ(姉も今でもこの出来事が頭にあるようで、「あの時助けなければ、アンタなんか今頃居なかったのに!」といつも憎まれ口をきく)。


子どもの頃の記憶は年を重ねるうちにどんどん消えていくものだが、二度の「さらわれ未遂」のことは、今でもはっきり憶えている。


他にもいろいろあった。

幼稚園の帰りに親と一緒に歩いているとき、正面からやってきたニヤニヤした変な男に、いきなり股間を思いっきり掴まれたり、別の男には後ろから尻を揉みしごかれるなど。


今の自分だったらともかく、当時子どもの自分にとっては、それらの体験はただ恐怖でしかなかった。


親は、「どうして男の子なのにこんなことが続くのか?」と不思議に思い、悩んだと聞く。


やがて、連れ去られ未遂や軽いイタズラされたとき、共通している“あること"に気付いたという。


それは決まって、自分が「赤いニット帽」をかぶっていたときに起こるということ。


そのニット帽は母親の姉が編んでくれたもので、とにかく血のように真っ赤な色をしており、模様も一切ないシンプルなもの。


体が小さかった自分が遠くからも親が見失わないようにということで、わざと目立つような色にしたという。


確かにそのとおりとなった。

だが、“安全のため"のはずが、逆に変な人にばかり目をつけられてしまうという、実に皮肉な結果を生み出した。

しかも何故か男ばかり引き寄せてしまうという…まさに将来を暗示していた。


大人になり、そんなことはすっかり忘れていた。


休日のある日実家に戻った際、

「これ憶えてる?」

母親が紙袋から何かを取り出した。


あ!思わず声をあげた。

そう、例の赤いニット帽である。

亡くなった父親の荷物を片付けていたときに押し入れから出てきたという。


ニット帽を改めて見てみると、手編みとは思えないほどよく出来ている。いまだほつれている箇所もなく、全く傷んではいない。

何十年も経っているのに、色褪せておらず、ハッとするほど赤々としている。


子どもの頃の苦い思い出により、ずっと赤色のものや派手な色のものは避けていた。

現在身につけるもので好む色は、もっぱら紺や黒な地味なものばかり。


今は誰が何を着てもおかしい時代ではない。

でも流石に自分が赤いニット帽をかぶるのはどうだろう?


そんなことをしばらく考えていると、


「せっかく懐かしいものが出てきたんだから…」と言われ、渋々自分のマンションに持って帰ることにした。

飾っておくだけならいいかな?


その日の夜、ニット帽を袋に入れて帰り道を急いだ。

途中、乗り換え駅のトイレに寄ったとき、まさか!と思えるような出来事が…


用を足していると、突然誰かが背中をトントンする。

まさに、その用を足している“最中“にだ。


え?何?

振り返った途端、

「うわぁ!!」と小さな叫び声を上げてしまった。


目の前に、腫れ上がったような局部を丸出しにしたオヤジが、ニヤニヤしながら立っていたのである。


口の悪いお仲間なら、

「あら!ラッキーじゃない?そんなイイモノ見られて!」と言うかもしれない。


いやいや、想像してみてほしい。

自分の一番嫌いなタイプの男がそんなことしていたら?


一瞬、その急所丸見せオヤジが勤務先の苦手な上司に似ている気がして、吐き気をおぼえた。


男はまだいきり立ったイチモツを握りしめ、ニヤニヤとずっとこちらを見ている。

遅い時間のせいかトイレには他に誰もいない。

一刻も早くその場を出たくて、手も洗わずに飛び出した。一体何なんだろう?

そこは普通の駅のトイレである。

決してハッテントイレとかではないはず…


乗り換えた電車の中で、ふと“ある事“が頭をよぎる。


(もしかして赤いニット帽が引き寄せた?)


まさか!バッグに入れてあるのにそんなことがあるわけがない。


帰ってから旦那に電話をし、その日の出来事を話した。


だが旦那ときたら爆笑しながら、


「あるわけないよ!そんなのただの偶然だろ?キミがイヤらしい欲しそうな表情しているからそんな目に遭うんだよ!」


\\٩(๑`^´๑)۶////


あんまりだ…(T . T)


旦那はさらにこう言った

「だったら、かぶって歩いてみろよ!」


自分だってニット帽にそんな力はないとは思う。でももしかしたら…


子供用に編んだものだけど、ニットなので無理すれば入らなくはなさそう。

そこまで言われるならかぶってみようか?

ただ別の意味で人から変に見られそう…


あんなに不快な思いをしながら、それでもどこかでちょっとだけ試してみたい自分がいたのである。