遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

ある休日の午後

先日の三連休は旦那が来るはずだった。

それが台風上陸のせいで中止。

久々だったのにな…(T_T)


それから2日後、すっかり晴れたこともあり、様子見がてら外に出て、某大型生活雑貨店まで足を伸ばし、店内をぶらぶらしていた。

その店は時々面白いモノを扱っているので、長い時間見ていて飽きない。


あちこち歩き回り、快眠グッズコーナーをチェックしていると、棚の隅から誰かの強〜い視線を感じる。


(あの人誰だろう?どこかで見たことあるような…)


普段そうしたことがあっても、チラ見するだけのはずが、その日はちょっと気になった。

それはその男が実に自分好みの顔立ちだったから。


「いいなぁ〜」って思える顔立ちや体格の男を見かけると、つい目で追ってしまう悪い癖がある。

いつも同じような感じの人ばかり気になるため、「どこかで会った」と思えるのもそのせいかと…


思わず男の顔をジッと見返すと、向こうは慌てたように目を逸らして立ち去ってしまった。


暫くして一階のフードコートに行くと、さっきの男がいた。いつの間にか黒い縁取りのメガネをかけている。

その瞬間、


(あ!思い出した!Jちゃんだ!)


突然記憶が甦った。


Jちゃん…それは旦那と知り合う前、二丁目の店で知り合い、少しだけ付き合っていた男。

もう15年以上前のことだ。

……………………………………

当時彼はひとりで店に来て飲んでおり、隣り合った自分は彼の顔に惹かれ、自ら声を掛けて酒を酌み交わした。

そして連絡先を交換し、翌週から一緒に食事をするようになった。


彼は、確か自分より3歳ほど上であったが、

かなり落ち着いた雰囲気を醸し出していた。


付き合い出して直後、

「婚約している女性がいる」と聞かされて合点がいった。


当時何となく後ろめたさを感じながらも、

「既婚者ではないから…」と自分に言い聞かせ、そのままずるずると関係を続けようとしたのである。

付き合い始めて1年くらい経とうとしたある日、突然彼から、


「結婚の日取りが正式に決まったのでもう会うのはやめる」


といった内容のメールが送られてきた。


不思議なことに、その時メールを読み終えても、彼の身勝手ぶりに怒ることも、もう会えなくなることへの悲しみさえも感じることがなかった。

そして、


(ああそうなんだ…じゃあ仕方ないね)


とあっさり諦めがついたことを今でも憶えている。


でももしも自分が駄々をこね、彼とそのまま無理してでも付き合いを続けていたら…


そんなありえたかもしれない人生に、時々想いを馳せてみたりすることも何度かあった。

………………………………………


(間違いない!あれはJちゃんだ!まさかこんなところで再会するとは…)


フードコートで佇む彼は、顔まわりは勿論、身体全体に肉がつき、大きくなったように見える。

そして以前の柔和な表情は消え、眉間に皺を寄せ、どこか苦悩が見え隠れしていた。


物陰からジッと見ていると、10歳と3歳くらい女の子ふたりと、彼と同じくらいの年齢の女性が彼のもとに現われた。


(彼の奥さんと子ども達?!)


急に胸がドキドキしてきた。

そして彼女達の顔をもっとよく見てみたいという欲求に駆られた。


(彼はどんな女性を選んだんだろう?

どんな家族と暮らしているんだろう?)


もう15年以上前に少し付き合った(正確にはヤッただけ?)男のことが急に気になってしまうのは何故だろう?ただの卑しい好奇心??


彼は見られていることに全く気づいておらず、4人で仲良さそうに、アイスクリームを選んでいる。


子どもはふたりともJちゃんにそっくり。

女の子は父親に似るというのは本当のことかも。


ただ奥さんを見て意外に感じた。

化粧もせず、髪もバサッとして手入れが行き届いていない。着ているものだって全く流行なんて考えていなさそう。


当時自分の中で、彼の奥さんはすごく綺麗な人と勝手に想像していたもんだから、ガッカリしてしまった。


不思議なものだ。

以前、ずっと彼の家族を目にしてみたいと願っていたはずなのに、いざそれが叶ってみると、見なければよかったと後悔している自分がいる。


そんなことを考えながら、ボーっと見ていると、彼が突然振り返り、ギョッとしたような表情でこちらの姿を捉えた。

間違いなく彼は気づいたはず。


その様子に何となく腹が立ち、一瞬近くまで寄ってみようかとしたけれど、すぐに思いとどまった。


別に彼に何の未練があるわけでもなく、ただ単に昔の知り合い?として、結婚生活や子どものことを聞いてみたいだけだったのに…


(自分と同じように男を求めていた彼が、自分が歩めなかった人生を手にしている…)


ゲイであるJちゃんが、現在の生活に果たして身も心も満足しているかはわからない。

それでも表向きは「幸せな家庭」を手に入れたわけだ。


なんだか複雑な心境だ。


自分にだって大切な旦那がいる。

かけがえのない存在だ。

でもふたりを繋ぐものは、互いの「愛情」だけ。「結婚」という契約なぞない。

ましてや、子どもなんて…

いつしか互いに年を取っていく。

頼りになるものは何だろう?


店を出て最寄り駅に向かう。


風が少しずつ冷たくなってきた。日も短くなり、夜になるのが早い気がする。


急に言い知れぬ不安に駆られるのは、冬が近づきつつあるからだろうか?