遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

ひとつの壁を超えた?

先週が仕事の山場だった。


これまで何度かブログに書いてるけれど、今年4月に突然人事部に異動。

そこは激務で社員の誰しもが嫌がる部署。

しかもボスは、役員も兼ねる「人事の鬼」と言われる冷酷非情な男。

そして同僚連中といえば、優秀だけれど陰湿な人間が多く、大半が外部から来ている者ばかり。

そこへ不幸にも何もわからず放り込まれ、あるポストにつけられてしまった自分。

前任者がすでに退職してしまったので、何をどうしたらいいのかもさっぱりわからない。なのに異動当時は「鬼」に疎まれ、ほとんど口もきいてもらえなかった。

直下は「猛女」と呼ばれる自分と同世代の女性。彼女も非常にコミュニケーションが取りづらい閉鎖的な人。

仲良かった社内の同僚らも妙によそよそしくなり、避けられるようになった。

まさにもう毎日が針のむしろ状態。


当初はもうとにかく全てが嫌で嫌で、毎日「辞めたい!脱出したい!」と思っていた(今も気持ちにそう変わりはない…)。


旦那にはなるべく心配かけたくはなかったけれど、彼がこちらに来たときに促され、全てを話してみた(過去記事「涙の先にあるもの」参照)。


旦那のアドバイスはこうだった。


「大変なのは理解出来るけど、半年…いや3ヶ月でいいからもう少し耐えてごらん。きっと君に何か変化があるはずだよ」


その時の自分は、何となく納得したような、してないような、そんな感じだった。


心のどこかで、


(あんな閉鎖的で内向きな場所に居続けて、一体どんな変化があるんだろうか?)


そう思っていた。

………

それから3ヶ月経ったある日のこと。

同じフロアーにいる人事部のボスである「鬼」から1通のメールが届いた(パーテーションがあるだけなのに、彼は何故かいつも社員にメールで連絡してくる)。


そこには、

「2週間後のアドバイザリーボードにて、導入する新しい人事制度についての説明を1時間でするように。まず資料を作成しメールで当職まで送ること」とあった。


(え??!何で自分が??)


アドバイザリーボードというのは、社内で何か新しいことを行なったり、導入したりする際、それらの評価やアドバイスをもらうための機関。別に意思決定機関ではないけれど、そこでの報告を経ないと物事が進まない悪しき慣行みたいなプロセスになっている。


アドバイザーはいい人もいるけれど、中にはただの難癖や文句ばっかりつけて、憂さ晴らしするような人もいる。

そんな連中らを相手に、まもなく導入する新たな人事制度について「説明せよ」と命じられた。

通常アドバイザリーボードでの説明は担当部門の役員が行うことになっている。

なのに「鬼」は自分を指名。


(きっと彼はやりたくないからだ…)


新しい人事制度については、ごく最近人事部から社内向けて概略だけ発表され、社員にすこぶる評判が悪い。

表向きは成果主義ということになっているけれど、半官半民である職場で本当に「成果」なんてあるのだろうか?と疑ってしまう。


だいたい自分は間もなく導入される人事制度について、最近内ようやく理解し始めたところ。

これまでの経緯や詳細な中身についてはとてもまだまだ…


実は制度には、外部から来た人間だけが優遇されるという理不尽なカラクリがある。

外部から来た「鬼」が自分を指名したのは、どうやらここにありそうだ。


(果たして納得できる説明なんてできるだろうか?)


不安は募るばかり。


ちょっと想像してみてほしい。

たとえば自社の新製品が恐ろしく使いようのないものだったとする。でもそれを「こんなに素晴らしいんですよ!」と偽って宣伝しなければならないとしたら…世の中だいたいそんなものかもしれないけど。


そしてもうひとつ「鬼」自身、講演や説明などが恐ろしく下手なこと。

制度は複雑で分かりにくく、上手に説明しなければ聞き手は全く理解することができず、いろいろな突っ込みを受け、格好の餌食になることは目に見えている。

きっと「鬼」はアドバイザーからの集中砲火を浴びることを恐れてのことであろう。

だからって異動して3ヶ月程度しか経ってない自分に説明責任を押し付けるなんてあんまりだ!

でも逃げるわけにもいかない…(ー ー;)


今まで以上に仕事が憂鬱になりながらも、その日から急いで資料を読み込み、資料作成を開始。

それを本業の空き時間にやらなければならず、ついつい後回しになってしまう。


ただでさえ職場が辛いというのに、アドバイザリーボードで説明を行うことが決まって以降、胸にすごく大きなつかえが出来たような気分。


そもそも自分は大勢の前に出て話をしたり、目立つようなことが好きではない。

出来ることならひっそりと大人しく黙っていたいタイプ。

それなのに…あ〜あ

(>_<)


「もうこんな仕事は嫌だ!同僚も上司も嫌い!残業だらけも苦しい!全て捨てて逃げられたらどんなに楽になるだろうか?」


毎日そんなことばかり頭に浮かぶ。

そして旦那には暇さえあると電話やメールでこぼしまくり。


するといつも決まって、

「大丈夫!君なら絶対うまくやりこなせるから!自分を信じてやってごらん!報告が終わったらその足でうちにおいで!」


そう言われ、挫けそうになる気持ちを奮い立たせ、どうにか準備を進めてきた。

………

そして迎えたアドバイザリーボード開催の当日。開始は午後2時。


今回は自分が話す前にふたりの役員が別件で報告。自分が最後で報告時間が一番長い。

さらに報告だけでなく、質疑もこなさなければならない。

 

会場に集まったアドバイザーは全国から100人くらい。中には自分の顔見知りもいる。

控え席に座る前、一瞬逃げ出したくなった。


やがて先のふたりの報告と質疑が終わり、ついに登壇の時間がきた。

先ふたりの年配役員の話し方が実に下手だったことに少しホッとする。

司会に紹介され壇上に上がる自分。

マイクを持つ手が少し汗ばんでいる。


大きく深呼吸をして話し始めた。

すると…


(あれ?全然緊張しない。なんでだろう?)


あがりまくって心臓バクバクになると思っていたのに、話していくうちに客席のアドバイザーらの顔もよく見えるほど落ち着いていく。

そして自分でも不思議なほどうまく説明ができたのである。


1時間後。

質疑も想定していたものばかりで無事に終了。


(あ〜やっと終わった!!嬉しい〜!!)


ようやく解放されたような気分になり、その場で飛び上がりたくなってしまう。


また顔見知りのアドバイザーのひとりから、

「あなたの説明すごくわかりやすかったよ!」

と言われ、お世辞と分かりつつ、思わず相好を崩す自分。

そのあと、何か不思議な高揚感が自分を包む。


(この感覚は何だろう?)

………

仕事を終え、新幹線に飛び乗り、

旦那の家に向かう。


彼の家に入った瞬間、ぎゅっと強く抱きしめてくれた。

そして、

「これでまたひとつ壁を乗り越えたな!」

と言われ、自分は小さく頷いた。


(もしかして、旦那が「3ヶ月経ったら見えてくるかもしれない」って言ってた変化って、このこと?)


でも敢えてそのことを聞いてみることなく、彼の胸元に深く顔をうずめていた。

旦那の男らしい匂いが心地いい。

 

何でもいい、今はただゆっくり休みたかった。