先週半ばのこと。その日は朝からものすごくいい天気。心地良い日差しが部屋に降り注ぐ。
外は暑くもなく寒くもなく、乾いた爽やかな風がそよいでいる。
ボッーと窓から外を眺めていると、むくむくと、ある思いが頭をもたげてくる。
(今日仕事行きたくない…どこかこのまま出かけちゃいたい)
深い溜息をついた後、朝食を済ませてノロノロと通勤支度を始めた。
だが、一度芽生えた小さな思いは急速な勢いで自分の中でぐんぐん育っていく。
(今日急ぎの案件はあっただろうか?自分が居ないと困ることってあるだろうか?)
(いやいや、子どもでもないのにちょっとした気分で突然休むなんて絶対ダメだ)
自分は学生時代から授業などを「ズル休み」をした記憶が殆どない。
あったとしてもそんな時は大概後ろめたさでいっぱいになり、全く楽しめない損な性格であった。
この日もしばらく心の中で葛藤が続いたが、結局最後は普段どおり電車に乗り、気がつけばオフィスに着いていた。
いつもの自分であれば、嫌々ながらもさっさと気持ちを切り替え、早々に仕事に着手したはず。
でもこの日だけはどうしても駄目だった。
先ほど消えたはずの「小さな思い」が成長しきって再び心の中にあらわれた。
五月病?歳のせい?それともこの状況がやっぱり耐えられないから?
いつしか目はパソコン上の業務スケジュールを追っている。
(やっぱり午後からサボっちゃおうかな…)
まだ上の了解を得ていないにも関わらず、
さっさと部内の連中に次々と
「急用が出来たので午後休むから…」
と言って回っていた。
直下の猛女に伝えると、彼女は顔もあげず、しばらく沈黙の末、
「……ワカリマシタ」
と無機質な声で返答。
人事部トップの役員に至っては、返事もなく頷くのみ。
(別にいいや。どうせ自分がここにいるのもそう長くないだろうから…)
まだ何のアテもないのに、願望含みで何故かそう思ったのである。
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12時になるとさっさと支度をし、挨拶もそこそこオフィスを飛び出した。
(もう遠慮するのはやめよう!有給休暇はそのためにあるわけだ。別に出世なんか全く望んでないし、職場の連中にいい顔しても結局利用されるだけ。むしろ“期待しないでください”という態度を見せていった方がいいに決まってる!)
解放感も手伝って、急に強気になる。
これからは完全割り切り主義を貫き通すのだ。
外に出ると、5月の陽射しと沿道の新緑が眩しい。
半日サボりのスタートだ。ウキウキ気分が止まらない。
まずはランチにしよう!
職場近くなのに時間がなくて行ったことがないNYセレブ御用達?とかいう有名イタリアンの店を訪れてみた(^-^)
土日でないせいかそこまで混んでおらず、テラス席に案内してもらえた。少し時間をずらしたこともあり、周りは有閑マダムみたいな人ばかり。
(いいなぁ〜優雅な生活だ。旦那さんは今頃汗水流して働いているのかな?自分もこんな生活してみたいな)
「専業主夫になりたい」って思う時はこんな時だ。
注文したのは
「北海道産生雲丹パスタ&ピザ」。
超ハイカロリー!でも堪らなく美味しい!
調子に乗ってグラスワインも頼んでしまう。
食後には甘くて濃厚なジェラート。
食事を終えた後は、腹ごなしにぶらぶらと街を散歩。気になる店に片っ端から入ってみた。
(最近新しい服を全然買ってないな…)
急に目に入った夏物のシャツが気になり即買いしてしまう。
(なんだか女の子みたいだな。見た目はただのオッサンだけど…(^^))
ひとり苦笑いをしてしまう。
はたから見れば、
「仕事サボって、そんなことしてて楽しいか?」
と思われるかもしれない。
答えは、
「YES!」
だって日頃全く自由がないから、こういう何気ないことが、自分にとってすごく気分転換になる。
買い物を終えた後は、レトロ感たっぷりのカフェを見つけ、そこで暫し休憩。
今後の展望を思い描いてみた。
先月「今の勤務先から何とか早々に脱出しよう!」そう決めて以来、旦那に相談したり、GWに自分でもいろいろ考えてみた。
結果、まずは信頼出来る関係者に会い、いろいろ相談を始めたところ。
もちろん即状況が大きく変わることは期待してはいない。
今はとにかく自分の中でエンジンをかけ、ナビゲーションを使おう、そんな感じだろうか?
そしてもう一つ。
自分自身の能力向上のために、ある勉強を再開(旦那の勧めもあった)し、来月初めから週一回通うことになった。
正直この勉強が、吉と出るか凶と出るかはわからない。
でも何もしないで待っていても今の状況は変わらない。結局自分で動かなければ何も始まらないのだ。
異動して1ヶ月近く。諸々の嫌なことに対して多少は慣れてきた。
ただ、社内の中核部署にいることで、知らなくてもいいさまざまなことを知ることになった。
このままいたら外部の人間にいいように酷使され、いずれは地方に飛ばされる。
そんな人事計画を知ってしまった以上、どうしても明るい将来が見えない。だとすれば…
(我慢を続けずここを出よう!)
今は毎日が暗いトンネルの中にいるようで辛くて仕方ない。
それでも最近自分で決めて始めたことは、これから先を照らす光となり、支えになってくれそうだ。
強く具体的に先をイメージすることで、その道を進んで行けそうな、そんな勇気が湧いてくる。
今の仕事は粛々とこなし密かに策を練る…
「面従腹背」。旦那から言われた言葉だ。
(明日からもう少し続けられるかな…)
半日サボりの効果はあったみたいだ。