遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

体育会系がいいとは言うけれど…

「採用するならやっぱり体育会出身がいい」とよく耳にする。


恐らく、肉体的にも精神的にも打たれ強い性格であり、上下関係をよく理解し、忍耐力も十分あると期待するからであろう。

人事担当のみならず、職場の多くは、体育会出身者に対しては、そんなイメージを抱きがちであり、自分もそのひとりであった。


先日、最近仲良くなった毒舌オネエさんと食事をした際も、この話題になった。


「アンタの場合、体育会の礼儀正しさ云々よりも、見た目がガチムチイケメンかどうかだけでしょ?それで評価するんでしょ?違う?」


果たしてそうだろうか?


昨年の今頃、自分と同じ部署に、Y君という若い子が異動してきた。

Y君は、昨年4月に入社した期待のホープ

某有名私大のラグビー部に所属し、フォワードとして活躍していたそうだ。


面接時、強豪校の体育会出身者ということで、「組織を革新的に変えていく可能性を持つ逸材」と評されたという。


身長は180センチ近くあり、全身筋肉の塊。

広い肩幅に、大胸筋は盛り上がり、二の腕も丸太のように太い。逞しい太腿に、引き締まったデカイ尻はキュッと上がっており、とにかく恵まれた体型。

クラブ以外にも、観光地で人力車をひくアルバイトをしていたとか。

当然スーツも良く似合う。顔はイケメンという感じではないが、男らしい精悍なタイプ。

ゲイビデオに出演したら、さぞや人気が出ることだろう。

そんな彼が自分のもとで一緒に働くことに。


Y君が異動してきて1ヶ月したある日、ビッグプロジェクトが発足されることとなり、将来性を見込んで若手からも数名が選抜された。

そのひとりにY君もいた。

どうやら部長が猛烈に売り込んだらしい。


しかし自分は、まだY君がどういう人物なのかを見極めることが出来ていなかった。


特に気になっていたのは、Y君の言動。

入社の歓迎会では、酔って上半身裸になり、見事な肉体美を晒すようなお調子もの。

また口調も体育会系特有の

「あざーっす!」「○○っす!」

クライアント受けが悪いので日頃注意をしているがなかなか直らない。

いつも「ビー部ではこれでよかったんすけど…」と言い訳ばかり。


(プロジェクトに彼が参加するのはまだ少し早いのでは?)


そんな一抹の不安を覚えながらも、プロジェクト発足会の日は近づいていく。


当日はクライアントと顔合わせのため選出メンバー全員が出席することとなっていた。

会は朝10時からスタート予定で、自分も部長もいつもより早めに出勤。

しかしY君は9時を過ぎても姿を表さない。


(一体何をしているのだろう?)


自分はイライラし始めていた。

携帯に何度電話しても彼は出ない。


しばらくしてようやく電話が…

 

「すみません。今日はどうしても行けません」

 

(え?!何言ってるんだ?!)


怒りを抑えながらも、理由を尋ねると、


「同居中の彼女の具合が悪くて…」とY君。


それを聞き、自分はキレた。

「グダグダ言わずに、今から来なさい!」

受話器をガチャンと置いた。


その後再び彼から、今度は部長宛てに電話があり、長々言い訳をした挙句、彼はプロジェクト発足会を欠席。


さんざんY君を高く評価していた部長でさえ怒りを隠さない。


若手の連中の話では、Y君は自分のFacebookでプロジェクトメンバーに抜擢されたことを自慢しまくっていたそうだ。

それなのに、このザマである。

もう溜息しか出てこない。


土日を挟み、週明けの月曜日。

出社したY君が、大きな身体を曲げながら、謝ってきた。

彼は何か菓子折りを持っている。


「これみんなで食べてください。お詫びです」


包みを見ると、“Tokyo Disneyland” とある。


「彼女の熱が下がったので、昨日一緒に行ってきたんすよ!」


呆れて返す言葉がなかった。


結局、上の判断で彼はプロジェクトメンバーから外されることになった。

 

少しは反省するかと思いきや、その後も彼の体育会のノリは相変わらず。

今年入ってきた後輩を顎で使い、やたらと先輩風を吹かすのである。

態度や言動は後輩の方がはるかに優っていると思うのだが…

また「頭が痛い」「腹が痛い」など何かと理由をつけてよく休む。よくそんな病弱でラグビー部が務まったと思う。


自分の彼に対する評価は下がる一方。

いくら容姿が自分の好みであるからといっても、彼を贔屓目に見ることも、庇う気も起きなかった。自分が評価するのは、人柄と誠意を持って仕事に取り組めるか否かだけ。


友人の毒舌オネエさんに再びこの話をする。


「ふーん。てっきりアンタのことだから、そのガチムチラガーマンを依怙贔屓でもしてるのかと思ったわ。アンタは、彼が体育会出身っていうだけで、勝手に過剰な期待をしていただけなのよ。でも実際はそうではなかった。だから裏切られたって感じるのよ。

結局、体育会系ってファンタジーなのよね。アタシは体育会の男なんて、ゲイビデオで観てるだけで十分だわ!」だって。


なるほど…確かにそうかもしれない。


(この先、Y君と一緒に仕事ができるだろうか?)


だが、そんな心配は無用であった。

先日、Y君が突然、


「入籍しました!そして来月父親になります!」と報告。


入籍??父親??

聞くところによると、同棲していた彼女とは別の彼女が妊娠していたらしく、来月出産するんだとか。

彼女は、5歳年上の看護師だという。

彼がラグビーで骨折した時、入院先で世話をしたのがきっかけで、同棲中の彼女と並行して付き合っていたという。

 

(二股交際だったなんて、よく堂々と平気で言うよなぁ)


さらに驚いたのは、彼が1年間育休を取るということ。所謂「イクメン」だ。

法律上認められており、もちろん堂々と取得できる制度であることは百も承知。

ただ勤務先の男性で取得した者はまだいない。Y君が初めてである。


(それも随分急だよな…何でもっと早く言わないんだろう?)


彼が育休を取るなんて想定外だった。

看護師の方が稼ぎがいいことから彼女が決めたことだとか。

しばらくは夫婦で休み、彼女だけ早々に復帰するらしい。


彼を見ていると、

「世の中はいつの間にか大きく変わったんだな」

ってつくづく思う。

 

いろんな人が居るのが当たり前。言ったもん勝ち、それを受け入れていかなければならない。そんな世の中になったんだろう。


だが自分はそう物分かりがいい方ではない。

それにY君の日頃の態度はあまりに…

いや、よそう。

とにかく彼とはしばらくお別れなのだから…


体育会、それも名門大学のラガーマンだったY君。

「組織を革新的に変えていくであろう男」

と期待されて2年。

メンバーに抜擢されたプロジェクトも不意にし、以来まだ一人前の仕事らしい仕事をしていない。


そんなY君が、上層部が当初期待したものとは全く違う意味で、職場を変えようとしている。