遠距離恋愛ゲイの独り言〜ふたたび

旦那と15年以上遠距離恋愛しているゲイのブログ。日常の些細な悲喜交々を気の向くままに。

現実が想像を超える日

先週半ばの夜、寝る支度をしていると、上司からスマホに着信が…


(こんな時間になんだろう?)


嫌な気分になりながら出ると、上司が一方的に甲高い声でまくしたてる。


高い声(しかも大声)が苦手な自分は、胸がキリキリした。

どうやら都知事の要請を受けて、「社員らを明日以降自宅待機にさせよう」という話らしい。

「ただし管理職以外…」。

………

翌朝7時30分に、役員と管理職の一部が集まった。他の社員らは、昨夜中に連絡が行き、いっせいに自宅待機。


「来週以降はどうするか?」


長々話し合いの結果、まずは週末までの平日はいずれも管理職だけで乗り切り、翌週からはシフト制を組むことに…


だが、ただでさえ“自己主張”と言う名の「文句言い」の多い職場。自分と同じくらいの世代の管理職の一部から、

「小さい子供がいるから自分も休みたい!独身や子供のいない管理職だけが出るべき!」

なんて平気で言う者もいる。


「非常事態の時だからこそ助け合う」

 

そんな言葉は綺麗事だとつくづく思う。

マスクやトイレットペーパーなどの買い占め騒動同様、人はいざとなると「自分さえ良ければいい」と、身勝手自己中な本性が出るものだ。

 

面倒なことを嫌い、表向きだけは大勢にいい顔をする新しい上司。

結局、子供のいる管理職は外され、彼らも自宅待機となった。

 

会議が終わり、自分の所属する人事部に戻ると、茶色の封書が届いていた。

不審に思いながら封を開けると、パソコンで打たれた手紙が入っている。

目を通すと、

「小さい子供の面倒をみると言って、特別休暇を取得している社員が、こんなことをして遊んでいるのをご存知でしょうか?」とある。

手紙と共に、SNSをカラーコピーしたものが大量に同封されていた。女性同士が子供を連れて、どこかの遊戯施設で楽しげに遊ぶものや、ホームパーティーをしているものばかり。

よく見ると、いずれも確かに某部署の社員達だった。


送り主がひいたと思われるマーカーのコメントを読む。


「旦那クンもテレワークだからぁ〜みんな一緒だよ〜★こ〜ゆ〜時こそぉ家族ダンランだねぇ〜★楽し過ぎ〜★」


自分は大きなため息をつきながら、手紙を封筒に戻す。


送り主が誰かは分からない。思い当たる社員が数名頭に浮かんだが、証拠はない。

それより、こんな他人のSNSを見つけ出し、わざわざ送りつけてくるという行為に薄ら寒くなる。


自分の職場は入社当時から、頻繁に怪文書やら告発文書が送られていると噂では聞いていた。だが、実際手紙を目にしたのは初めてのこと。今回のものは、上司にも一応見せるつもりだが、どうせ「匿名なんだし放って置こう」って言うに決まっている。


(自分は何でこんなところにいるんだろう?

やっぱりこのままここに居るべきではない。それともどこの職場もこんなもの?自分はどこか感覚がズレている?)

………

夜遅く仕事を終え、電車に乗る。

車内は、以前ほどではないけれど、花見&飲み会帰りと思われる連中は一定数おり、車内でマスクもせずにハイテンションで喋りまくっている。

そんな連中を横目に見ながら、旦那に勤務先が独身と子供のいない管理職以外、シフト制になったことを知らせた。


旦那からはすぐ返事がきた。


「君が感染したら誰が責任取るんだよ?君だって年取ったお母さんいるだろ?」


彼はそう言うと思った。


(そんなことはわかってるよ。でもじゃあどうしたらいい?)


ここで自分まで文句を言い出したら、あれこれ言う同僚と一緒になってしまう。だったら、自己責任で今はもう少し頑張るしかないじゃないか。


今日はため息ばかりだ。

 

車内の酔っ払い連中は、一段と騒がしくなった。


飛び交う「感染爆発」「緊急事態宣言」「首都封鎖」という言葉なんて、彼らには無縁みたい。きっと別世界の出来事だと思っているんだろう。


でも現実はそうではない。


今まで映画や小説の中だけだと思っていたようなことが、これから起きる気がしてならない。

電車の窓に広がる深い夜の風景を見ていると、東日本大震災の時に感じた底知れぬ不安、いや、それ以上の恐怖のようなものを今感じてしまうのだ。

それでも季節は巡る

先日の三連休の初日、父親の眠る墓にひとりで行ってきた。

コロナウイルスの影響で、彼岸法要も中止。

寺から「塔婆料と供養料は納めるように」と封書が届いたことから、持参することにした。

郵送するという手もあったが、やっぱり自分は墓参りだけは、せずに居られない。

幼い頃はあんなに面倒くさいと思っていたのに…


寺は、実家から片道電車で二時間くらい。都心なのに古い下町のようなところ。


その日は少し風が強かったけれど、空は青く澄み渡り、暖かい春の陽射しが実に心地良い。


普段仕事では朝早く出かけ、夜遅く戻る日々。日中も窓のない部屋の奥にいるため、どんなに晴れていようと、陽の光の恩恵に預かることがない。


(天気がいいと、外はこんなに明るくて、気持ちがいいんだ…)


当たり前のことに驚きを覚えてしまう。


春が好きな季節か?というと、実はそうでもない。

過ごしやすいけれど、周りが浮き足立ち、いつも気が滅入るのだ。

自分は秋の方が好きだ。


それでも、春は新しいモノが出てきたり、美味しいものも多く、心くすぐられる。

もしも、いつもの春を迎えていたら、仕事のストレス解消に、「どこかに飲みに行こう」「面白いモノを探しに行こう」なんて考えてただろう。

それが今は何をするにも、二の足を踏んでしまう。


最近、ネットを開いても、テレビを観ても、「コロナ、コロナ」と朝から晩まで、暗いニュースのオンパレード。

煽られまくり、身も心も完全なる「コロナ疲れ」だ。


もうGWの海外旅行をどうするか?なんて呑気なことを言っている場合ではない。

まさかこんな事態になるなんて、想像すらしたことがなかった。


いろいろ思い巡らせながら、寺までの道を歩く。


昔ながらの商店街は、休業なのか半分ぐらいがシャッターがおり、以前より静かだ。


けれど人は結構出てきて、みんなマスクを着けて、所在なげに歩いている。自粛続きで退屈で家にいられないのだろう。

 

(こんな出てきてて、大丈夫なんだろうか?)


商店街を抜け、寺の近くの公園までやってきた。沿道には色鮮やかな春の花々が咲き始めている。

気がつけば桜も少しずつ花開いている。

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桜はともかく、普段は道端の花を気にしたことがなかった。

眺めていると、今世界中がコロナに怯え、恐怖に陥らされていることを、つい忘れてしまいそうになる。

 

やがて寺に着き、先祖の眠る墓を掃除した。

今年はお参りの人も少ない。

買ってきた花を供え、線香もあげた。


父が生きていたら、この状況を何て言っただろう?


ふたたび墓前に手を合わせ、

「また来るね」と言い、寺を後にした。


見上げるとどこまでも広がる青い空。


(次ここに来る頃、この世の中はどうなっているだろうか?普通の生活を送ることができているだろうか?)

 

非常事態になってはじめて、何もない平凡な日常の有り難さを思い知る。

 

先の見えない不安で塞ぎ込みそうになるけれど、明るい春の光に、少しだけ心が慰められる。

どんなに社会がコロナ騒動で疲弊しまくろうが、季節は着実に進んでいく。

遠距離夫夫の記念日

今月は、旦那と出逢った月。

その日は年によって当然曜日が異なるので、いつも一緒に過ごせるわけではない。

そうなると、その前後の週末が、これまで長く付き合ってきたことを祝う、大事な日になる。


去年の記念日は、ちょうどリフレッシュ休暇を取得し、海外でまるで夢のような時間をふたりで過ごすことができた。

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(去年現地で撮影)

 

これまで何度も書いてはいるけれど、旦那と出逢ったのは、2丁目の飲み屋。

ひとりで飲んでいるところに、偶然彼がやってきて、一目惚れ。時間が経つのも忘れて話し込み、気づいた時は朝だった(過去記事『2丁目の出逢い』参照)
cherrybeargo.hatenablog.com

自分はそれまで飲み屋で一晩過ごすようなことは、一度もなかった。その時はただ彼とずっと一緒にいたくて(店のスタッフに取られたくないっていう思いもあったけど)、ここで帰ったら「もう二度と会えないかも」ってどこかで考えていたんだろう。


人生に「if」なんて言い出したらキリがないけれど、「もしもあの時、朝まで店に残らなかったら…」「もしも翌朝空港に行かなかったら…」、きっと旦那とは付き合っていなかっただろうな。そして自分は誰とも付き合うことなく、日々「(街や電車で見かける)あの人いいな〜」「こんな人と出会いたいな〜」なんて思い巡らしながら、独り悶々と暮らしていたに違いない。


それが、旦那と付き合いだしたことで、自分の人生は大きく変わった。


海外にも行くようになり、英語やドイツ語も勉強するようになった。そして何より、少しずつ自分に自信が持てるようになったのだ。


彼と一緒にいると、いろいろなことに気づかされる。そして人生はちょっとした行動がきっかけで、大きく変わることもあるとつくづく思う。


でもあの時は、まさか自分が遠距離で付き合うことになるなんて、そしてこんなに長く続くとは…予想だにしなかった。


長く付き合っていれば、もちろん喧嘩くらいする。最初の頃は、何度も関係を終わりにしようとさえした。

いろんなことを乗り越え、今ではようやく「遠距離夫夫」みたいな関係になっている。


あれから知らぬ間に時間が経ち、気がつけば出逢って16年。


相変わらず「遠距離」というハードルはあるけれど、それでも関係は毎年深くなっている。


今年も一緒に出逢えたことをふたりで祝うはずだったのにな… 

それが突然のコロナ禍により、自分は職場の子どものいる社員の仕事をするため、急遽毎週土曜日も出勤することになってしまった。


しばらくずっと逢えないけれど、旦那を大切に想う気持ちに変わりはない。むしろこういう時だからこそ、この想いは強くなる。


「遠い空の下に旦那がいて、いつも自分を支えてくれる」


そう考えるだけで、自分は強く生きていける気がする。

 

今年の記念日はそんなことを、電話で伝えてみようかな…

味覚音痴?

先日昼間のこと、東京駅あたりをウロウロしていた。昼にオフィスで食べるものと、今度旦那に会った時に渡すお土産を探すため(この状況下で、いつ会えるか見通しが立たないけれど…)。

会う時は何となく互いに、お土産を渡す習慣がある。特に旦那は、親用に持ってきてくれるのだ。

 

この状況で在宅勤務が多いせいか、ランチタイムでもオフィス周辺は人の数がめっきり減った。そんな中、いろいろ見て回っていると、デパートの1階で何やら珍しく人だかりが…


何だろう?

シュールなイラスト(人の顔)が書かれた広告が見える。

犬の餌(ごめんなさい)みたいな銀色のパッケージだ。


スナック菓子??

フリット??ああ、ジャガイモの揚げたものだ。

 

店の名前は、「AND THE FRIET」。

広尾にあるフレンチフライ専門店が出しているスナック菓子を、販売してるらしい。


実はポテトスナック菓子には目がない自分。

いい年してジャンクフードの食べ過ぎは身体に良くないとわかってはいるんだけど…

コンビニとかで新商品(特にポテトチップス)が出ているのを見ると、自然と手に取ってしまう。特に好きなのは、塩味、次はチーズ味。


ナニナニ?

AND THE FRIET」のドライフリットは、厳選されたベルギー産のジャガイモを使用してて、フランス産の塩がまぶされてるんだとか。

こういうのを読むと、すぐに食べてみたいな〜って思うわけ。


(そうだ!これにしよう!)


今度に旦那に会った時のお土産はこれに決定!

その前に自分で味見しようっと。


売っていたのは、

「塩、バルサミコ、黒トリュフ、蜂蜜塩、アンチョビ」の5種類の味(実際はお洒落な英語表記となっている)。

1袋60gで450円。

うーん、結構いい値段だけど…まあいいや、素材にそんなに拘ってるならきっと旨いはず。とにかく試してみよう!


自分が購入したのは、ベーシックな塩と黒トリュフの2種類。

お酒のつまみになるかな?

 

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でも何でパッケージは、こんなシュールなイラストにしてるんだろ?

こういうのが今お洒落なのかな?

夜起きた時、これがテーブルにあったら何か怖いような気がする。

………

週末、試食をしてみた。

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パクっ!


「うわー美味しい!!??わけでもない?……あれ?」


正直、普通?

この味はどこかで食べたような……

あ、思い出した!


北海道のお土産の定番

じゃがポックル」?

いや

じゃがビー」かな?

トリュフ味ってあったし…

 

すみません…全く自分には違いがわからない。


実はこれに似た話がある。

一昨年のGWにベルギーを旅行した。

その時、ずっと食べてみたかったものが、ベルギー名物のフライドポテト。


「発祥地のベルギーで、揚げたてのポテトに特製マヨネーズをつけて食べたい!」

と楽しみにしていた。

 

着いて早々、一番人が多くて人気のありそう店の前に並び、20分近く待ってようやくゲット!

それがこれ(よく写ってないけど)。

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最初に旦那がひとかけ食べる。

「………」

 ーーどう?美味しい?

「………」

今度は自分も食べてみる。

あれれ?

バーガーキングのセットについていたポテトの方が美味しかったような…

前日の昼、別の場所で食べたファストフードのポテトの方が、ずっと美味しかったと感じる自分。しかも安いし…

 

旦那なんてその後手もつけず、

「あとは全部食べていいよ」と渡された。


あ〜あ。

あんなに行く前は散々期待していたのにな。

やっぱり「名物に美味いものなし」?

それとも自分が「味覚音痴」なだけ?


こんな失敗をしておきながら、また同じようなことしてる。

 

くだんの「AND THE FRIET」。

広尾のお店では、揚げたてが食べられるらしいから、そこはもっと美味しいのかな?

いや、芋は芋かな?

 

ここのフリットをお土産にするかどうするか?今迷っている。

ああ、でもそれ以前に会えないか。

逢えるのはいつになるやら…

ここのところ、職場がコロナウイルス騒動に振り回され、バタバタが続いている。

政府が突然の方針を出すたびに、勤務先も右往左往。

今月開催する予定だったイベントや会議類は全て中止。

「キャンセル料は?」

「代替開催は?」

「休止はいつまで?」

先週、社内はその対応に追われた。


さらに今月から、突然全小中高が休校になってしまったことで、自分の所属する部門では、子供のいる社員についての特別休暇付与など、話し合いが続いていた。こんな時、どうしても自分のような独身者にはしわ寄せがくる。


時差通勤が導入されても、自分は立場上、

「朝早く来て遅く帰る」という状態。

いろいろ社員からのクレームやら不安などの問い合わせで、疲労困憊。


自分はさほど気持ちの切り替えが上手でないので、仕事で煮詰まっているとそのことしか考えられないタイプ。

そんな時は旦那とのやりとりも自然と疎かになる。


旦那の仕事先はフレキシブルな勤務が可能なところ。地方都市のため、どこかのんびりしている。

当初この時期、彼は英国出張するはずが、感染拡大で延期…代わりに在宅勤務と春休みを取るという。


少し前までは、彼と毎朝電話していた。でも自分がいつもより早く家を出なければならなくなり、しばらく朝は電話なし。


オフィスに着き、早々から会議でイライラしている中、彼からスマホにメッセージが届く。


「おはよう。今朝は卵焼きとソーセージ作ったよ。今度一緒に食べよう!」と写真付きだ。


(相変わらずのんびりしてる…)


さらに

「今週末そっち行ってもいいかな?」と。


会議中なので、返事はせず、スマホを急いでスーツのポケットへ仕舞う。


2時過ぎにようやく会議が終わり、15分くらいで昼食を済ませる。2時半から別の会議。所属部署は会議だらけだ。


そこへ誰かが、

「近くのビルに感染者が立ち寄ったらしくてニュースに出てる!」と騒いでいた。

自分のいるオフィスのすぐそばのビルだ。

もう何処に感染者が居ても不思議ではない。自分のいるビル内、いや同僚にだっているかも。

 

また旦那からメッセージがきた。

「お昼食べるよ。豚カツ定食だよ。君は何食べた?」

オフィス内がざわついている中、旦那のメッセージがあまりに能天気に思えた。

そこで、「近くのビルに感染者が出て不安」とだけ送る。


するとすぐに返事がきて

「そうなんだ。でも大丈夫だと思うよ。ところで週末はそっち行っていい?」


(大丈夫って何で?それどころじゃないよ!)


買ってきたパンを急いで流し込み、旦那には返事もせず、会議に向かう。

あれやこれやで、その日仕事が終わったのは午後9時過ぎ。

結局、3月中の土曜日は、複数の社員が、小学生の子どもがいる社員の代わりに休日出勤することに…もちろん自分もそのひとり。


ふと気がつくと、スマホには、旦那からまたメッセージがきていた。


「同僚らと飲んでるよ」と写真付き。

さらに

「週末行くけど、どこで食べようか?」

 

(こっちは全然余裕がないのに…)

深い溜息が出た。


旦那に逢いたい気持ちは山々だ。

でもこんな時は少し控えないと…

今月いっぱい土曜出勤となった以上、しばらくそれは叶わない。しかも新幹線で移動するならリスクも当然高くなる。


「3月は全て土曜休日出勤になった」

とだけメッセージを送る。


旦那から返事はこなかった。

夜遅く家に戻って電話をしたが、やっぱり出なかった。

 

コロナウイルスがもたらした隙間風…逢えるのはいつになるだろう?

心穏やかは続かない

勤務先の上司が変わり、職場環境が少し改善されたことは、以前ブログにも書いたとおり。新しい上司は温厚で話しやすい人。


ただ最近、

(この人も期間限定だから、もしかすると、全ての社員にいい顔したいだけなのかな?)

と思うようなこともちらほら…今回はそんな話。


勤務先は半官半民であり、ちゃんと仕事をしようがしまいが自然と回る、いわば役所のようなところ。

そのくせ働いている者の多くは、権利意識だけが異常に高い。見ているとつくづく人間は強欲だと思う。また時間に余裕があるせいか、退屈凌ぎに、「人の粗探し」「不幸探し」「足の引っ張り合い」ばかりする社員も少なくない。

その中のひとりに、Sという年配のアルバイト女性がいる。

彼女は10年ほど前、当時の役員のコネで入ってきた。

Sは来た当初から性格がキツく、自己主張が非常に激しいタイプ。

口を開けば他人の悪口、嫌味、皮肉を垂れ流し、撒き散らす。

彼女と社内で初めて会った時、あまりに悪意が顔に滲み出ていて驚いたものだ。


当時Sはちょっとした庶務をするだけで、大きな仕事は任せられていなかった。

だが入って早々、

「オフィスが寒過ぎる!仕事に支障が出る!自分専用のデスクヒーターを経費で買ってくれ!」と言い出し、あっという間に社内で悪い意味での有名人となった。

もちろんヒーター購入については、彼女が役員のコネということですぐさま実現。


採用時の触れ込みでは、「関西の有名女子大出身で、大手外資系で有能な役員秘書だった」らしい。

けれど、いざ働きだしてみると、正直Sは仕事が全くできず、電話応対も、パソコンでの資料作りも、ダメダメ尽くし。

それでも彼女は上に取り入り、次第にどんどん力を持ち始め、もっと大口を叩くようになっていった。

彼女と一緒に働いていた若い女性社員は、嫌気が差したのか次々退社。

Sはさらに調子に乗り、

「社員の出ている会議に出たい」

「事務員の採用面接に立ち会いたい」

「法人カードの貸与」「役職と名刺がほしい」など、周囲を唖然とさせるような暴言を吐き続けた。それはコネ役員が去っても全く変わらず。

どの部門の社員とも衝突し、転々と異動し続ける彼女。早い段階で手を打てばよかったのに、Sの上司がコロコロ変わることで、なし崩し的に契約更新が続いてしまった。


以前は一緒に仕事をしたことがなく、嫌な様子を苦々しい思いで傍観するだけだった。それが不運にも、数年前Sと一緒の部となった時、あまりの傍若無人な振る舞いに、堪忍袋の緒が切れそうになった。


若手社員を呼び捨て、顎で使う。何かこちらが頼もうものなら、必ず居丈高に口ごたえをする。そして決まって最後は、

「それだけの時給をもらっていません!時給上げてください!」と言い放つ。


多くの社員が年配のSを恐れ、ご機嫌取りをする中、上席の連中には、彼女を毛嫌いする者もいて、いくつかの悪行を理由に、何度かSを追い出そうという動きもあった。だが、そんな時はなぜか決まって彼女に「神風」が吹き、都度Sは難を逃れてきた。

世の流れも彼女に味方し、いつしか「年1回更新」から「無期雇用」に転換。

さらには、まもなく迎える60歳以降も「再雇用」の道が用意された。


人事部に自分が異動した時、今まで彼女が吹聴していた経歴「神戸の有名女子大出身で、大手外資系で役員秘書」が、全て嘘であったことも知った。もちろん口外は出来ない。


まともな人間は自主的に辞めたり、彼女に次々と追い出され、疫病魔だけが法に守られ居座り続ける…悪運が強すぎるのだ。


そしてさらに追い討ちをかけるようなことが…


最近、人事部の新しいボスが、

「ちょっと話がある」と自分を呼び出した。

実はその数日前にSがボスのところに来ており、嫌な予感がしていた。


会議室でふたりだけになると、ボスはこう言った。

「Sさんの時給のことだけど…」

 

(ああ、やっぱりきたか…)


役員のコネで来たことから、当初から驚くほど高額な時給で働いている彼女。

何かの専門職でもここまでは貰えないはず。

他の待遇だって社員とほぼ同じ。


それが新しい人事部ボスが来たことから、「待ってました!」とばかりにさらに自己主張し始めた。

まさかSの言うことを受け入れるような愚かなことはしないだろうと思ったが…


「労基署とかに駆け込まれると困るからさ、もう少し上げてあげたいんだ。ちょっと検討資料を用意してくれるかな」


新ボスの前で落胆のあまり、深い溜息が出てしまった。


(ああ、どうしてこんな理不尽なことばかり?)


家に帰って旦那に電話でこぼす。

すると、


「どこにでもそんな人はいるんだよ。考えても仕方ない。それよりGWの旅行計画でもして気を紛らした方がいいよ」


彼からそう言われも、すぐには気分は晴れない。

もう世の中がそういう流れになっていることは仕方ない。でも自分はそう理解が良い方ではない。いくら他人のことだからと思っても、簡単には納得出来ないのである。


今の世の中、特に政治の世界がそうだけど、

「悪い事をやった者、言った者勝ち」という風潮がある。


善人ぶる気もないし、正義感を振りかざすつもりもない。ただとにかく釈然としないのだ。


(世の中すべてがおかしくなっている)


そう思うのは自分だけだろうか?

やってみた!

先週末、ビクビクしながら旦那の家まで行ってきたことは、前回のブログにあげたとおり。

 

金曜日の夜は焼肉屋でたらふく食べ、その後も場所を変えて遅くまで飲んでいたこともあり、帰る頃はもう23時半を回っていた。

 

旦那の住む街は地方都市で、あたりは時折走ってくる車が道を照らす程度。夜になると、人なんてほとんど歩いておらず真っ暗。

そんな中、ふたりでゆっくり家を目指す。


ふと、ブログ『ゲイとして生きている平凡な男』のエゾマルさんの記事(2/13)を思い出した。

 

(そうだ!)

 

突然、並んで歩く旦那の手を握ってみた。

ビックリして手を離されるかな?と思ったけど、旦那は何も言わずにギュッと握り返してくれた。


(大きくて温かい手…)


考えてみると、長年付き合ってて、手を繋いで歩くなんてこと、あっただろうか?

確か海外に行った時、開放感も手伝って、少しだけしたかな?

長い時間飛行機やバスなど座った時、こっそり手を繋ぐことはある。その時は、決まってブランケットやコートで覆い、見えないようにしていたっけ。


手を繋ぎながら、しばらくほろ酔い気分で歩く。なんだかすごく幸せな気分。


男女のカップルなら当たり前のことが、男同士だとなかなかね…ましてやオッサン同士!が手を繋いで歩くなんて、決して見好いものではない。

でもこんな夜なら誰も見てない。


「来月は出逢った月だね」なんて、付き合い始めの頃を思い出しながら、いろいろ話す。

 

やがて、しばらく歩いていると、向こうからふたりの人影が現れた。

 

自分は慌てて、手を離して引っ込めようとした。だが旦那は逆に強く握って離さない。

(え?何で?見られちゃう!)

思わずぎこちない動きをしてしまう。

 

やがて、こちらは手を繋いだまま、ふたりとすれ違う。若い男女だった。

向こうはこちらには目もくれず、自分達の世界に入ったまま、ペチャクチャ喋りながら、通り過ぎて行った。


「ほら、こんなもんだろ?みんな他人の事なんて見てないし、関心もないんだよ。それに見られたって構わないだろ?知ってる人でもないしさ」


(うん、確かにそうだ。自分は少し自意識過剰になってるのかな?)


旦那の横顔がいつにも増して男らしく見える。自分はまた彼の手を強く握りなおした。

また旦那は言う。


「そう遠くない将来、こんなことは当たり前の光景になる日が来るんじゃないかな」


ーーああ、そうなったらいいのにな。


「10年以内になるかな?」


自分が尋ねると、旦那は何も言わず、微笑んだ。

その手を握ったままいつまでも離したくなかった。